
「遺言書を書いておきたいけれど、自分で書いて無効にならないか心配」。そんなふうに感じていませんか?
こうした不安は、とても自然なことです。
公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関わって作成するため、形式の不備で無効になるリスクがほとんどありません。「確実に想いを届けたい」と考える方にとって、最も安心できる遺言の方式です。
長野法律事務所では、遺言書の内容を一緒に考えるところから、公証役場との調整、当日の立ち合いまで、トータルでサポートしています。
この記事では、公正証書遺言の作り方を、手順・費用・必要書類にわけて丁寧にご説明します。
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは、公証役場で公証人が作成する遺言書のことです。
公証人とは、法務大臣から任命された法律の専門家です。裁判官や検察官の経験者など、法律実務に精通した方が務めています。
遺言者が遺言の内容を口頭で公証人に伝え、公証人がそれを法的に正確な文書にまとめます。作成された原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
作成方法について、自筆証書遺言は遺言者本人がすべて手書きで作成しますが、公正証書遺言は公証人が作成します。手書きの負担がないため、高齢の方や手が不自由な方でも利用しやすい方式です。
無効になるリスクについて、自筆証書遺言は書き方のルールを一つでも守れていないと無効になるおそれがあります。一方、公正証書遺言は公証人がチェックしながら作成するため、形式不備で無効になることはほとんどありません。
保管方法について、自筆証書遺言は自宅保管が基本です(法務局の保管制度もあります)。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのリスクがありません。
検認手続きについて、自筆証書遺言は原則として家庭裁判所での検認が必要です。公正証書遺言は検認が不要で、相続が発生したあとすぐに手続きを進めることができます。
公正証書遺言は、次の5つのステップで作成します。全体の期間はおおむね2週間~1か月程度が目安です。
まずは、「誰に」「どの財産を」「どのように」残したいかを整理します。
ご自身の財産を一覧にし、それぞれの分け方を考えましょう。不動産、預貯金、有価証券、保険など、漏れがないようにすることが大切です。
この段階で弁護士に相談されると、遺留分(法律で保障された最低限の相続分)への配慮や、将来のトラブルを防ぐための工夫についてもアドバイスを受けられます。
遺言の内容に応じて必要書類を準備します。詳しくは後ほどご説明します。
戸籍謄本や印鑑登録証明書など、役所で取得するものが中心です。不動産がある場合は登記事項証明書や固定資産評価証明書も必要になります。
書類の準備には1~2週間かかることが多いため、早めに取りかかることをおすすめしています。
遺言の内容と必要書類がそろったら、公証役場に連絡をして打ち合わせの予約を入れます。
打ち合わせでは、公証人に遺言の内容を伝え、文案を作成してもらいます。弁護士に依頼している場合は、弁護士が文案の作成から公証人との調整まで代行します。
浜松市内には「浜松公証役場」がありますので、そちらで手続きが可能です。
なお、打ち合わせの段階では費用はかかりません。公証役場への相談は無料です。
公正証書遺言の作成には、当日証人2名の立ち会いが必要です。証人の選び方は後ほど詳しくご説明します。
適任の方が見つからない場合は、公証役場から紹介を受けたり、弁護士事務所のスタッフにお願いしたりすることもできます。
当日の流れは、おおむね次のとおりです。
まず、公証人が遺言の内容を読み上げます。遺言者はその内容に間違いがないか確認し、署名・押印を行います。続いて、証人2名も署名・押印し、最後に公証人が署名・押印をして完成です。
所要時間は30分~1時間程度が一般的です。
完成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。遺言者には正本と謄本(コピー)が渡されます。
※2025年10月からは、公正証書のデジタル化が始まっています。電子データでの作成・保存が原則となり、署名に代えて「電子サイン」(タッチペンによる手書き)で手続きが完了するケースも増えています。ただし、従来どおりの紙での作成も可能です。
「費用がどのくらいかかるか」は、多くの方が気にされるポイントです。
公正証書遺言の費用は、おもに以下の3つで構成されます。
公証人に支払う手数料は、「公証人手数料令」という法令で全国一律に定められています(2025年10月1日に約25年ぶりの改正が行われました)。
手数料は、遺言で財産を受け取る人ごとに、その財産の価額に応じて計算します。
主な手数料の目安は次のとおりです。
さらに、遺言全体の財産が1億円以下の場合は、「遺言加算」として13,000円が上乗せされます。
【例1】財産5,000万円を妻1人に相続させる場合
【例2】財産5,000万円を妻に3,000万円、長男に2,000万円相続させる場合
財産を受け取る人が増えると、その分だけ手数料が加算される仕組みです。
証人を公証役場や弁護士から紹介してもらう場合、1人あたり5,000円~15,000円程度の日当がかかります。証人2名で10,000円~30,000円程度が目安です。
ご自身で証人を手配できれば、この費用は不要です。
遺言の内容の検討から公証役場との調整まで弁護士に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
長野法律事務所では、30万円程度です。
「費用をかけずに済ませたい」というお気持ちはよくわかります。
ただ、遺言の内容に問題があると、のちのちのトラブルにつながることもあります。費用は「将来の争いを防ぐための保険」と考えていただけると幸いです。
入院中や施設に入所されていて公証役場に行けない場合は、公証人に出張してもらうことも可能です。その場合は以下の追加費用がかかります。
公正証書遺言の作成にあたって、基本的に必要となる書類は以下のとおりです。
書類の取得先はおもに市区町村の役所や法務局です。弁護士に依頼した場合は、書類の収集を代行してもらえることもあります。
※必要書類は遺言の内容によって異なります。事前に公証役場や弁護士に確認されることをおすすめしています。
公正証書遺言の作成には、証人2名の立ち会いが必要です。
ただし、証人になれない人が法律で決められています(民法974条)。
つまり、ご家族やその身近な方は証人になれないケースが多いのです。
信頼できる友人や知人に依頼するのもひとつの方法ですが、遺言の内容がすべて証人に知られることになる点は、あらかじめ理解しておきましょう。
周囲に適任者がいない場合は、弁護士や公証役場に紹介してもらうのが安心です。守秘義務のある専門家であれば、遺言の内容が外部に漏れる心配がありません。
登場人物と背景
Aさん(80歳)は、妻と長男・次男の4人家族でした。自宅の土地・建物(評価額約3,000万円)と預貯金約2,000万円の財産があり、長年介護をしてくれた長男に自宅を相続させたいと考えていました。費用をかけたくないと思い、自筆証書遺言を作成しました。
何が起きたか
Aさんが亡くなったあと、遺言書が発見されましたが、日付の記載に不備があり、無効と判断されました。長男と次男の間で遺産分割協議が始まりましたが、話し合いがまとまらず、家庭裁判所での調停に発展。解決まで約1年半かかり、弁護士費用や調停費用で合計約120万円の出費となりました。
結果
最終的に自宅は売却して代金を分割することになり、長男は住み慣れた家を手放すことになりました。Aさんの「長男に家を残したい」という想いは、かなえられませんでした。
➡ 公正証書遺言で作成していれば、形式不備で無効になることはなく、Aさんの想いは確実に届いていた可能性が高いです。
登場人物と背景
Bさん(75歳)は、妻に先立たれ、2人の娘がいました。預貯金約4,000万円と自宅マンション(評価額約2,500万円)がありました。入院中に「遺言書を作っておきたい」と思い立ちましたが、公証役場に行くことができませんでした。
何が起きたか
娘が弁護士に相談したところ、公証人に病院まで出張してもらえることがわかりました。弁護士が遺言の内容を整理し、必要書類を準備。約2週間で公正証書遺言が完成しました。費用は公証人手数料・出張費用・弁護士報酬をあわせて約25万円でした。
結果
Bさんはその3か月後に亡くなりましたが、公正証書遺言があったおかげで、検認手続きも不要でスムーズに相続手続きが進みました。2人の娘は「父の想いがきちんと残っていてよかった」と安堵されていました。
➡ 公証役場に行けなくても、公証人の出張制度を使えば遺言書を作成できます。「元気なうちに」が理想ですが、「今からでも遅くない」ケースはたくさんあります。
公正証書遺言の最大のメリットは、「形式面の安全性」にあります。公証人が関わるため、書き方のミスで無効になるリスクはほぼゼロです。
しかし、形式が完璧でも、内容が不十分であれば、トラブルを防ぎきれないことがあります。
たとえば、遺留分を考慮していない遺言書。法律上は有効でも、遺された家族が「遺留分侵害額請求」を起こし、争いに発展してしまうケースがあります。
あるいは、財産の特定があいまいな遺言書。「預金はすべて長男に」と書いたものの、口座が複数あり、どの口座が対象なのか分からず混乱するケースもあります。
私たちが遺言書の作成をお手伝いするとき、最も大切にしているのは「何を伝えたいのか」を丁寧にうかがうことです。
法律の要件を満たすことはもちろんですが、ご家族への想い、これまでの感謝、将来への願い。そうした気持ちを整理するお手伝いをすることが、弁護士の大事な役割だと思っています。
公正証書遺言には「付言事項」(法的な効力はないけれど、家族へのメッセージを添えられる欄)もあります。「なぜこのように分けたのか」を自分の言葉で残しておくことで、ご家族の受け止め方は大きく変わります。
遺言書は、争いの道具ではありません。ご家族への最後の手紙です。
この記事では、公正証書遺言の作り方について、手順・費用・必要書類を中心にご説明しました。
改めてポイントを整理します。
手順は、①遺言の内容を決める → ②必要書類を集める → ③公証役場と打ち合わせ → ④証人2名を手配 → ⑤公証役場で作成、という5つのステップです。
費用は、公証人手数料(財産額に応じて数万円~)+ 証人の日当(1万円~3万円程度)+ 専門家への報酬(依頼する場合)が目安です。
必要書類は、印鑑登録証明書、戸籍謄本、財産に関する資料が基本です。
自筆証書遺言と比べると費用はかかりますが、その分、「確実に想いが届く」という安心感があります。
特に、以下のような方には公正証書遺言をおすすめしています。
「家族の関係にヒビが入る前に備える」。それが、最も穏やかな相続への第一歩です。
「遺言書を作りたいけれど、何から始めればいいかわからない」。そう思ったときは、まずはお気軽に長野法律事務所の無料相談をご活用ください。遺言の内容を一緒に考えるところから、公証役場との調整まで、しっかりと伴走いたします。